【DTM】Cubaseで学ぶ!『ギター 打ち込み講座』
Cubaseユーザーの皆さま、ギターの打ち込みでお困りではありませんか?
ギターにはハンマリングやチョーキングなど様々な奏法があり、これらを打ち込みで再現する場合はピッチベンドやエクスプレッションを上手く活用しなければなりません。
そこでこの記事では、Cubase付属のマルチ音源「HALion Sonic SE」を使用して、奏法別にギターを打ち込むコツやポイントを詳しく解説します。
この記事を読めば、誰でも簡単にリアルなギターパートが作れるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
ギター打ち込みの基礎知識
ギターの打ち込みを始める前に、ギターの基礎知識を身につけておきましょう。ギターの知識を得ることで、よりリアルなギターを打ち込めるようになります。
身につけておきたいギターの基礎知識は以下の3つです。
1.ギターの音域
2.ギターのボイシング
3.ピッチベンドとエクスプレッション(CC#11)
1.ギターの音域
ギターには6本の弦が張られており、各弦の音域は以下のようになっています。
ギターは6弦の音がもっとも低く、右へ行くほど音が高くなります。
ギターには同じ音が出せる場所が複数あります。ギターを打ち込むときは「何弦の音か?」を意識して入力するようにしましょう。
●2つの音名表記「国際式とヤマハ式」
音名の表記方法には国際式とヤマハ式があります。国際式は真ん中の「ド」が「C4」なのに対し、ヤマハ式は真ん中の「ド」が「C3」になっています。
音名の表記方法はDAWソフトによって異なるので、複数のDAWソフトを使う場合はMIDIの打ち込む位置に気を付けましょう。
2.ギターのボイシング
ギターを打ち込むときは、ギター特有のボイシングを知っておく必要があります。ギターは指の本数や長さの関係で物理的な制約があり、ピアノほど自由が利きません。
たとえば、Cadd9のコードを演奏する場合、ピアノでは簡単に押さえられますが、ギターでは指が届かずに押さえることができません。
ギターを打ち込むときは「指で押さえられるか?」を意識して入力しましょう。
3.ピッチベンドとエクスプレッション(CC#11)
ギターの奏法はピッチベンドとエクスプレッションを使って再現します。
・ピッチベンド
・エクスプレッション(CC#11)
ピッチベンド
ピッチベンドは音の高さを変化させるパラメーターです。ギターの打ち込みではハンマリングやスライド奏法などを再現するときに使用します。
値の変化量はベンドレンジによって異なり、今回使用するマルチ音源「HALion Sonic SE」は、デフォルトで「ベンドレンジ=2」に設定されています。
そのため、音程を全音上げる場合は「8191」、半音下げる場合は「-4096」と設定します。
エクスプレッション(CC#11)
エクスプレッションは音量を変化させるパラメーターです。ギターの打ち込みでは音量が減衰するハンマリングやグリッサンドなどの奏法を再現するときに使用します。
エクスプレッションの初期値は「127」になっており、この値が小さくなるほど音量は下がります。
●エクスプレッションを追加する
1.左下の「+」アイコンをクリックし、新たなコントローラーレーンを追加します。
2.追加されたコントローラーレーンにカーソンを合わせ、「▼」をクリックしましょう。
3.一覧から「CC 11(エクスプレッション)」を選択します。
4.コントローラーレーンにエクスプレッションが追加されました。
ギター音源を準備する
打ち込みで使用するクリーンギター音源とディストーションギターを準備します。今回はCubase付属のマルチ音源「HALion Sonic SE」を使ってみましょう。
クリーンギター音源を準備する
1.右ゾーンから「VSTインストゥルメント」を選択します。
2.マルチ音源「HALion Sonic SE」を選び、プロジェクトゾーンにドラッグ&ドロップします。
3.マルチ音源「HALion Sonic SE」が表示されました。
4.クリーンギター音源をセットします。「Guitar/Plucked」→「E.Guitar」→「Clean Guitar VX」を選びましょう。
5.クリーンギター音源がセットされました。
6.ベンドレンジを変更する場合はベンドレンジの数値をクリックし、値を変更しましょう。
ディストーションギター音源を準備する
1.右ゾーンから「VSTインストゥルメント」を選択します。
2.マルチ音源「HALion Sonic SE」を選び、プロジェクトゾーンにドラッグ&ドロップします。
3.マルチ音源「HALion Sonic SE」が表示されました。
4.ディストーションギター音源をセットします。「Guitar/Plucked」→「E.Guitar」→「Distortion Guitar VX」を選びましょう。
5.ディストーションギター音源がセットされました。
6.ベンドレンジを変更する場合はベンドレンジの数値をクリックし、値を変更しましょう。
ギターを打ち込もう!
ここでは、ギターの打ち込み方を奏法ごとに解説します。
コードストローク
コードストロークは指でコードを押さえて、「ジャラ~ン」と弾く奏法です。この奏法は腕を振り子のように振りながら、ダウンピッキングとアップピッキングを交互に使って演奏します。
コードストロークの打ち込み【Clean Gt】
コードストロークはMIDIノートの発音タイミングをズラして打ち込むことがポイントです。こうすることで各弦の音が鳴るまでに時間差が生まれ、ギターらしさを表現できます。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。コードストロークはダウンピッキングとアップピッキングを交互に使って演奏するので、これも打ち込みで再現する必要があります。
ダウンピッキングの場合は低い音から弾くので、以下のように入力します。
●クオンタイズプリセットは「1/128」に設定しよう
打ち込む位置をズラす時は、クオンタイズプリセットを「1/128」に設定しましょう。
そうすることで打ち込む位置を「15」ずつ変更できます。
アップピッキングの場合は高い音から弾くので、以下のように入力します。
コードストロークはコードが変わるタイミングで一瞬音が途切れます。コードの変わり目は少し間を開けておき、ギターらしさを表現しましょう。
アルペジオ
アルペジオはコードを分散させて弾く奏法です。
アルペジオの打ち込み【Clean Gt】
アルペジオはもう一度同じ弦を弾くか、コードが切り替わるまでMIDIノートを伸ばすことがポイントです。こうすることで音が重なり、アルペジオがキレイに聴こえます。
ベロシティはコードの最高音を1番大きくし、ルート音を2番目に大きくします。そして、残りの音は適度にバラつかせて、均一にならないように入力しましょう。
そして、コードが切り替わるタイミングで一瞬音は途切れるので、コードの変わり目は少し間を開けておきます。
ハンマリング
ハンマリングは弦を弾いた後、別の指で弦を叩くようにして音を出す奏法です。この奏法は低い音から高い音へ繋ぐ時に使用します。
ハンマリングの打ち込み
ハンマリングはピッチベンドとエクスプレッションを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を上げ、エクスプレッションではハンマリング時の音の減衰を表現します。
今回は「ソ」の音を「ラ」に変化させるため、ピッチベンド値は「8191」に設定しています。エクスプレッション値は「100」に設定し、ハンマリング時の音の減衰を再現しました。
プリング
プリングは押さえている弦を引っかくように離して、音を出す奏法です。この奏法は高い音から低い音へ繋げる時に使用します。
プリングの打ち込み
プリングはピッチベンドとエクスプレッションを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を下げて、エクスプレッションではプリング時の音の減衰を表現します。
今回は「ラ」の音を「ソ」に変化させるため、ピッチベンド値は「-8192」に設定しています。エクスプレッション値は「100」に設定し、プリング時の音の減衰を再現しました。
スライド
スライドは弦を弾いた後、弦の上を指で滑らせながら音程を変化させる奏法です。この奏法は半音単位で音程が変化するため、音をなめらかに繋ぐ時に使用します。
スライドの打ち込み【Clean Gt】
スライドはピッチベンドとエクスプレッションを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を変化させ、エクスプレッションではスライド時の音の減衰を表現します。
今回は「ソ」の音を「ラ」に変化させるため、ピッチベンドとエクスプレッションは以下のように設定しています。スライドは半音単位で音程が変化します。経過音も忘れずに入れましょう。
スライドは経過音を入れるタイミングがとても重要です。経過音を入れる際は音を聴きながら、タイミングを調整しましょう。
グリッサンド
グリッサンドは弦を弾いた後、弦の上を指で滑らせて音程を変化させる奏法です。この奏法はスライドとよく似ており、こちらも半音単位で音程が変化します。
グリッサンドの打ち込み(Distortion Gt)
グリッサンドはピッチベンドとエクスプレッションを使用して打ち込みます。ピッチベンドは音程を変化させ、エクスプレッションはグリッサンド時の音の減衰を表現します。
ピッチベンドは同じ間隔で半音ずつ下がるように設定し、グリッサンド時の音程変化を再現します。
エクスプレッションはピッチベンドと同じ間隔で設定し、グリッサンド時の音の減衰を表現します。
最後にピッチベンドとエクスプレッションの値は元に戻しておきましょう。
ビブラート
ビブラートは弦を弾いた後、押さえている弦を上下に動かし、音を揺らす奏法です。
ビブラートの打ち込み
ビブラートはピッチベンドを使用して打ち込みます。上の画像のように「ベンドレンジ=1」に変更し、ピッチベンド値「0」の位置から上方向に波を作ります。
この時、ピッチベンドの値は半音を超えないように設定しましょう。
●ビブラートの波を作ろう!
1.「ライン」ツールをクリックし、サイン波に切り替えます。
2.コントローラーレーンを左クリックし、以下のようにビブラートの波を作りましょう。
3.「オブジェクトの選択」ツールに切り替え、入力した波全体を囲んでください。
4.波の大きさを調整しながら、波の位置を移動させましょう。
5.これでビブラートの波が完成しました。
カッティング
カッティングはストローグとブラッシングを組み合わせて、歯切れのよいリズムを刻む奏法です。
カッティングの打ち込み【Clean Gt】
カッティングはブラッシング部分のMIDIノートを短くすることがポイントです。MIDIノートの長さは「00.00.15」ぐらいに設定するとよいでしょう。
ベロシティはストローク部分とブラッシング部分で差を付けます。今回はストローク部分のベロシティ値「100」、ブラッシング部分のベロシティ値「80」に設定しています。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。今回は以下のようにダウン&アップを繰り返しているので、こちらも打ち込みで再現する必要があります。
ダウンピッキングの場合は低い音から弾くので、以下のように入力します。
アップピッキングの場合は高い音から弾くので、以下のように入力します。
ブリッジミュート
ブリッジミュートはピッキングする方の手をブリッジに置き、弦に軽く触れながら弾く奏法です。この奏法はギターにディストーションをかけて、パワーコードと合わせてよく演奏されます。
ブリッジミュートの打ち込み【Distortion Gt】
ブリッジミュートはエクスプレッションを使用して打ち込みます。エクスプレッションで音量が早く減衰するように書き込み、ブリッジミュート時の音の減衰を表現します。
音量の減衰は鳴り始めから20%あたりの位置でスタートさせ、7割程度減衰させます。今回はエクスプレッション値「127」からエクスプレッション値「40」まで減衰させました。
●ラインツールで入力しよう
エクスプレッションの書き込みはクオンタイズプリセットの「1/32」に設定し、ラインツールを使いましょう。
そうすることでキレイな線が簡単に描けます。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。今回は以下のようにすべてダウンピッキングで演奏しているので、こちらも打ち込みで再現する必要があります。
普通に演奏する部分は以下のように入力します。パワーコードは2音だけなので、打ち込む位置は同じで構いません。ベロシティ値だけ差を付けておきましょう。
ブリッジミュート部分は以下のように入力します。ベロシティ値は普通に弾く部分よりも低く設定し、差を付けておきましょう。
チョーキング
チョーキングは弾いた弦を指で押し上げて音程を変化させる奏法です。音程を上げる動作はチョークアップ、音程を戻す動作はチョークダウンと呼びます。
チョーキングの打ち込み【Clean Gt】
チョーキングはピッチベンドを使用して打ち込みます。チョークアップ時は音程が上がるように書き込み、チョークダウン時は音程が戻るように書き込みます。
今回は「ソ」の音を「ラ」に変化させているので、ピッチベンドは以下のように書き込みましょう。
●ラインツールで入力しよう
ピッチベンドの書き込みはクオンタイズプリセットの「1/32」に設定し、ラインツールを使いましょう。
そうすることでキレイな線が簡単に描けます。
まとめ
今回はCubase付属のマルチ音源「HALion Sonic SE」を使用して、奏法別にギターを打ち込むコツやポイントを詳しく解説しました。
ギターを打ち込みで表現できるようになると、リアルなギターパートが作れるようになります。本章を読み終えたら、各自でギターパート作りにチャレンジしてみましょう。
Cubaseの使い方講座では、ギター以外にも様々な楽器の打ち込み方を解説しています。他の楽器の打ち込み方にも興味があるかたは、以下の記事もあわせてご覧ください。